第十一Chapter 打撃に対する”象り”

    打撃に対する”象り”

  ・ 突いて来た瞬間  
  ・“二之歩” 足の進め
01・二之歩(位 取) Kuraidori
02・位 取(揺 篭) Yurikago
03・三角投       Misuminage
04・手 車(揺 篭) Teguruma
05・笹 舟(揺 篭) Sasafune
06・鳩尾突      Kyubituki
07・遡 上      Sojyou
08・枕 落      Makuraotosi
09・飯台返      Tyabudaikaesi
10・大 返(二連打) Oogaesi
11・日 暈      Higasa
12・響 波      Yuranami
13・波 動      Hadou
14・地蔵返      Jizougaesi
15・帰 投      Kaerinage
16・八文字      Hatimonnji
17・衣 笠      Kinugasa
18・お頭落      Otumuotosi
19・鹿 威      Sisiodosi

    ・ 突いて来た瞬間

本編では、打撃に対する対処する象りを解説したい。
何と言っても打撃は、実戦においてまず、想定しなければならない攻
撃だろう。前部の「取りにきた瞬間(取られる直前)をとる勢法」が
こなせれば打撃に対処し得る下地は出来ている。同編でも触れた通り
大切なのは“象る”ことだ。
 必ずしもボクサーのように身体の絶対的運動速度を上げ続ける訓練
をする必要がない。
 例えば、予め「ここに、こう言うタイミングでやってくる」と分か
っているパンチを避けるのに、パンチを超えるような身体速度は必要
がないのだ。
しかしながら、打撃にある程度、慣れというものも必要だ。
打撃というものをまったく見てこなかった人間が、実戦でいきなり繰
り出される本気の打撃をかわすのは、至難のことだ。私自身が行
った打撃対応の訓練を一つご紹介したい。危険もないのでぜひ試して
みていただきたい。
 まず野球の硬球ボールにタコ糸をつけて、柱のある所に、腹くらい
の高さに吊るす。そして、そのボールの前に立ち、そのボールを前に
押すと、そのボールは時計の振り子のように振れる、帰ってくるボー
ルを90度で体捌きをしてかわす、そのときボールは自分の前を通り
過ぎ、また、ボールはもとの位置にもどる、ボールは重いから、時計
の振り子のように、ある程度の永久運動を起こす。
 コースは決まっているので、よけいな動きを考える必要はない。そ
の代わり、短くコンパクトで、速く正確に捌く体動が必要だ。
 足運びには第七部で紹介した“二之歩”を参考に、いろいろ試みつつ
つかんでいってほしい。これが捌けるようになってきたら、本気の打
撃を避ける要領もある程度身に付いている。
 全力で打撃がやってこようとしている瞬間は大きなピンチかもしれ
ないが、それを適切に避けられたら、その瞬間にはもう絶好のチャン
スが訪れている。多くの場合、相手は力んでもいる。あとは舞うだけ
で自然に“象る”となる。
 また、二人で稽古するときは第七Chapter二之歩を参考にすると良い
また、相手が顔面を突いてきた時などは、同時に攻撃をする、その
その場合は捌きながら耳で相手の拳を聞くことが最高だ。

    ・“二之歩”(位 取)足の進め

「二之歩」は相手の突きをよけるだけのものではない。ポジショニ
ングも見逃してはならない要素だ。
 次の図は顔面に突き込まれるのに対して、シンプルに「二之歩」を
行った例。どうなるか?
 相対した状態から、「二之歩」を行うと、相手を正面に向かせたま
ま斜め前から相手をとらえる優位ポジションをとった状態に自然にな
っている。 もちろん打撃も食らいにくいポジション取りだ。こうゆう
ポジションを取ることがいかに難しいかは、打撃の自由組手でも、柔
道の乱取りでも少しやってみれば如実に実感できるだろう。

    ・“二之歩”(位 取)

 足の進め「二之歩」は相手の突きをよけるだけのものではない。ポ
ジショニングも見逃してはならない要素だ。
 次の図は、顔面に突き込まれるのに対して、シンプルに「二之歩」
を行った例。どうなるか?

   ・二之歩(位 取)Kuraidori  YouTube


(一図)    双方自然体で立つ
(二図)(受方)右足を進めて右手で捕方の顔面を突く
    (捕方)其の瞬間に二之歩で捌きながら右手を左側へ振り上
        げ
(三図)    左足を横に開きながら受方の右腕に左背手を当てる
        中段の突きも同じ。

     ・三角投 Misuminage YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く
    (捕方)其の瞬間、右足を進めながら受方の右拳を耳で聞く
        よう捌き同時に左手を上方へ廻し上げ
(二図)    受方の右肘関節に当て
(三図)    枝垂れながら受方の右手を圧し同時に左足を後へ退
        き受方を倒す

    ・位 取(揺 篭)Yurikago YouTube


        双方相対するが受方は左構え
(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら右手で受方の右手の
        取り
(三図)    左足を開きながら左手を受方の右上腕の穴(清冷淵
        )第五Chapter上肢背部参照に当て


(四図)千尋を描きながら
(五図)少し引いてから
(六図)圧し受方を我が前下に投げる。

    ・手 車(揺 篭)Teguruma YouTube


(一図)(受方)右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら右手で受方の右手の
        取り
(二図)    左足を開きながら左手を受方の右腕の下へ当て
(三図)    受方の右手を受方の左胸に当てるように廻し


(四図)我が前へ受方の右手を引きながら左足の後に右足を退き
(五図)受方の右上腕の穴(清冷淵)に左背手で当て千尋を描きなが
    ら受方の右手を伸ばし
(六図)受方の右手を引き左小手で圧し我が前下に投げる

    ・笹 舟(揺 篭)Sasafune YouTube


(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら右手で受方の右手の
        取り
(二図)    左足を開きながら受方の右手を下方へ下げながら左
        小手を右上腕の穴(清冷淵)に当て
(三図)    左足の後に右足を退きながら受方の右手を横に引き


(三図)左足の後に右足を退きながら受方の右手を横に引き
(四図)右足を自然体に直し
(五図)千尋を描きながら受方の右手を伸ばし受方の右手を引き左小
    手で圧し我が前下に投げる。

     ・鳩尾突 Kyubituki YouTube


        双方相対するが受方は左構え
(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の中段を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、左手を左側から廻し上げ同時に右手も廻
        し上げ


(三図)受方の右手の上から左手を当て同時に右手を上方へ上げ
(四図)受方の左肩先に当てこの時千尋を描くからメビウスの象りに
    なる
(五図)そのようにして我が左側に受方を投げる。

      ・遡 上 Sojyou YouTube


        双方相対するが受方は左構え
(一図)(受方)右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、左手を振り上げて肘を捻るそれから左足
        を踏み出し


(三図)左手を下しながら受方の上腕に掌を当て
(四図)右手を受方の右手首まで滑らしながら手首を圧し
(五図)我が左側に受方を落とす。

     ・枕 落 Makuraotosi YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、右足を進めながら受方の右拳を耳で聞き
        ながら
(三図)    受方の顔の左側に右手を伸ばして後首に当て


(四図)左足の後に右足を退きながら体を捻り
(五図)右足を自然体に直しながら受方の首を引き我が小手に乗せ
(六図)我が左側に受方を投げる。

      ・飯台返 Tyabudaigaesi YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、受方の左側へ二之歩で捌きながら受方の
        右拳を流し
(三図)    右足を横へ開きながら左手を上げ


(四図)受方の右手の上に左手を乗せながら右手を受方の左肘の下か
    ら当て
(五図)腰を落とし受方の右手を圧し同時に左肘を上方へ押し上げ
(六図)我が前下へ受方を投げる。

  ・二連勢に変化(大 返)Oogaesi YouTube


(一図)(受方)右足を進めて二連打で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、受方の左側へ二之歩で捌きながら受方の
        右拳を流し二連打の左拳に左手を当て
(二図)    右足を横へ開きながら左手で受方の左手を下げなが
        ら
(三図)    我が右側へ振り


(四図)受方の左手の上に右手を乗せ我が右手を捻りながら右足の後
    に左足を退き同時に左手を受方の後首に当て
(五図)右手で受方の右手を受方の背後へ大きく廻し上げ
(六図)同時に左手で受方の首を圧し我が前下へ投げる

      ・日 暈 Higasa YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳を左側か
        ら左手を廻し上げ下しながら取り
(三図)    上方へ廻し上げ


(四図)体を捻りながら右足の後に左足を退き
(五図)左足を受方の右足の前に開き同時に左手を受方右腕の下に当
    て
(六図)右肘を捻りながら腰を入れて我が前下へ投げる。

      ・響 波 Yuranami YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳を取り
(二図)    受方の右手を受方の右側へ下しながら左手で取り同
        時に左足を受方の右足の横へ踏み込み


(三図)同時に右手を受方の左肩に優しく当て
(四図)右足を進めこの時竹符の象りで踏み込む
(五図)左足を進めながら我が前下へ落とす。

      ・波 動 Hadou YouTub


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳を取り
(二図)    受方の右手を受方の右側へ下しながら左手で取り同
        時に左足を受方の右足の横へ踏み込み


(三図)同時に右手を受方の右肩に優しく当て
(四図)右足を進めこの時竹符の象りで体だけが進む
(五図)左足を踏み込みながら我が前下へ投げる。

     ・地蔵返 Jizougaes YouTube

(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳を右手で
        取り
(二図)    受方の右手を受方の右側へ下しながら左手で取り同
        時に左足を受方の右足の横へ踏み込み
(三図)    右手を受方の右肩に優しく当て


(四図)右足を進めこの時右肘はそのままにして体だけが進む
(五図)次に右肘を受方の首に当て(図のように
(六図)右肘を残しながら左足を踏み込み
(七図)右肘を伸ばしながら受方を倒す。

     ・帰 投 Kaerinage YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳を右手で
        取り
(二図)    受方の右手を受方の右側へ下しながら左手で取り同
        時に左足を受方の右足の横へ踏み込み
(三図)    左足の内側に右足を進め同時に受方の右腋下に我が
        右肘関節を下から当て


(四図)左足を踏み替えながら受方の右手を両手で上方へ上げ
(五図)右足を開きながら右手を捻り
(六図)左手と右手を同時に地に向けて圧するから受方は受け身をす
    る。

     ・八文字 Hatimonnji YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、右足を右側へ開きながら受方の右拳の内
        側か左手を上方へ差し上げ同時に右手を受方の左肩
        口へ魂抜手で差し込み


(三図)受方の右手を我が左手で引きながら右手を取り地に向けて受
    方の右手を引き
(四図)左足を右足の前に踏み入れながら受方の右手を我が左足の前
    に引き
(五図)受方を倒す。

     ・衣 笠 Kinugasa YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳の外側
        から右手を受方の右肩口へ小指を掛け
(二図)    受方の右肩を引きながら左足を開きの
(三図)    受方の右肩へ我が左手を当て受方を我が前で廻しな
        がら伸ばし


(四図)左足の内側に右足を寄せ同時に右手を受方のまえから左肩に
    あて受方の首を前から絞め
(五図)左足を斜め後へ開き
(六図)腰を捻りながら我が右手を差し込み受方を倒す。

     ・お頭落 Otumuotosi YouTube


(一図)(受方)左構えから右足を進めて右拳で捕方の顔面を突く、
(二図)(捕方)其の瞬間、二之歩で捌きながら受方の右拳の取り下
        方へ下げながら
(三図)    左足を受方の右側へ進めながら受方の右手を左手で
        取り同時に右手先を受方の右霞に当て


(四図)右手を捻り戻しながら掌底をおでこに当て
(五図)右足を進めながら左手先を聖門に当て同時に受方の額を圧し
(六図)左足を進め我が前下へ受方を倒す。

     ・鹿 威 Sisiodosi YouTube


(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の顔面を突く、
    (捕方)其の瞬間、二之歩で右足を半歩退き同時に受方の右
        手を我が右手で取り
(二図)    左足を受方の右足の横に踏み込み同時に受方の右手
        下げながら我が左手で取り
(三図)    右手を受方の後首に当て


(四図)左足を退きながら右手で受方の頭を下方へ圧し同時に右足を
    受方の右足の内側へ踏み込み左手で受方の右手を受方の後上
    から廻し上げ
(五図)受方の右手を我が左手で取り
(六図)受方の右手を受方の背中から左側へ廻しながら受方を我が右
    側に投げる。

     

 

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