点・腺・面
01・接点の変化
02・点・線・面
03・手の変化の在り方
04・接点による関係変化
05・実際の勢法における使い分け
06・検証(投 網)
07・上肢部(要 穴)
08・下肢三部(要 穴)
・接点の変化
武芸に“絶対強者”や“絶対勝者”はいない。
それは、蛇は蛞蝓に負け、蛞蝓は蛙に負け、蛙は蛇に負け、いわばジ
ャンケンのようなものだ。グーはパーに負け、パーはチョキに負け、
チョキはグーに負ける。その瞬間を制するには、その瞬間の相手に応
じて変化するしかない。
さまざまな手の使い方も在るが、手によって“接点”もさまざまに変わ
る。“接点”が変われば、ものは伝わり方も変わってくる。
単純に接触すれば単なるぶつかり合い、“力比べ”になってしまうとこ
ろを、接点の変化によって(力)や体格とは違う次元で勝つ関係性持
っていくことができる。これも“太極舞”の有力な方法論だ。
例えば、相手と押し合うような関係を考えてみる。手と手を接触させ
る訳だが、その内実にはいろいろある。
接触には“面”と“線”と“点”とがある。おおまかなそれぞれの特
徴を表現すれば、面は線に負ける。線は点に負ける。点は面に負ける
その瞬間を制するには、その瞬間の相手に応じて変化するしかない。
〇面は空のように広く大きく包み込む性質を持つ。
△線は水平に大きく広がるような性質を持つ。
☆点は物の最初で最も強い突破力(一点突破)を持つ。
そしてこれからが、あだかもジャンケンのような、三つ巴の関係を 持つ。
△線は面に、包み込まれる前に水平に大きく広がっていく。
△線は水平に広がる前に点で抑えられてしまう。だから広がる事がで
きない。
〇面は点に抑えられる前に、大きく広がり立体的に包み込むことよっ
てコントロールすることができる。
点が最強と言うことも面が最強と言うこともない。しかし、次のよ
うな関係性になる。
〇面は点に優位。線に劣位。
△線は面に優位。点に劣位。
☆点は線に優位。面に劣位。
つまり相手が面で来るならば線で応じれば優位であることであると
言うことだ。これはこんな検証法で実験できる(次ページ図参照)
相手と掌と掌を合わせ、押し合う。当然ながら、これは普通の“力
比べ“だ。ここで拮抗状態の(力)加減を確認する。
次に、相手の掌に対して手刀で応じる。するとすぐに“関係性”が
変化していることを実感できるだろう。同じ(力)加減で進み合え
ば“力比べ”にならずに勝 つことができてしまう。
厳密に言えば単なる「接点形状」だけの問題ではなく、そこえ向け
てのエネルギーの変化が関わってくる。面には面に対する体の遣い
方、線には線に対する体の遣い方と言うものが存在するが、それは
後発の変化だ。接点を変化させればおのずと押し合う接点が“面”対“
面”(右側図)ならば、拮抗関係になり体格・筋力勝負となるが“面”
対“線”(右側写真)だと、“線”が勝ててしまう。それに伴って
体の遣い方も変化してくる。
・点・線・面
(一図)指先、点と点で摘む(二図)腺で、優しく挟む(三図)掌で力を消
・手の変化の在り方
手は掌を握れば、グ・そしてチョキ・パーと変化するがそれだけ
ではなく第十一部の手楯に使われている勢法では、相手が進みなが
ら、捕方の生地を両手で取らんとする処を、右足を軽く進める(こ
の進みは相手の間合いを縮める、即ち間合いを盗む)そして相手の
胸に手先を触れ掌を当てる。
(二図)点で当て(三図)面で押さえ同時に小胸筋を緩め、その面
のままで、(四図)小指の点に変化しながら掌の中心、労宮の勁で
圧すると相手は抵抗することが出来ない。第十一Chapter 手 楯 参照
(一図)手先の点(二図)小指の点
(三図)中指と薬指を曲げた指先の間に労宮が在る(四図)手掌
注意することは小指以外の指で圧するときは、使い方によって
は自分に反作用が起きる。
・接点による変化YouTube
(一図)面と面は拮抗する (二図) 線と面は線が勝す
(三図)面と点は線に勝つ (四図)線と点は面に勝つ
点、線、面、この三称は、三者合わせて用と称して、総ての“象り”に
使用される。さらに、この三用は背骨を緩め、核に気を起く、絶対に(力)を入れて使用しては成らない。
・実際の勢法における使い分け
“小指先の点でつまむ” “掌の中心の労宮で圧する”
(一図)相手の手を取って落とす操作。一見普通に握っているよう
だが、「小指と親指で」つまんでいる。
だからこそ抗わずに崩すことができる。
(二図)相手のつまんだ手を斜めに引きながら、双子星(千尋)を描
き同時に肩に右手を当て労宮の(穴)を面として圧する。
相手の手首を掴む。多くの人はベタッと“面”で掴もうとするだろう。
いわばグリップ(力)を最大化しようという行為だ。
(力)ずくしで引っ張り込もうとするならば、正解かもしれない。
“やわら”では基本的にそのような掴み方はしない。八機手で挙げた手
法で“蛇手”と言うが、小指と親指でつまむような取り方だ。一見して
外見からはその違いはわかりにくいが、実際に取ったり取られたりす
る、当人にはすぐにわかる。
単純なぶつかり合い、(力)比べにならないような 工夫が、密かにこ
んな風に行われているのだ。実際の勢法の中で行はれている点・線・
面の使い分けを見てみよう。
・検証 投 網 toami YouTube
(三図)の矢印は 点~腺
(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の左手首を取って引く、(二図)(捕方)其の瞬間、核で千尋を描きながら右足を左足の後に
退き同時に受方の右手を取り
(三図) 左足を受方の右足の横へ踏み出しながら右手首を受
方の右肘関節の下に当て
(五図)の 矢印は点から霞み (六図)の 矢印は 小指で握る
(四図)右足を左足の内側へ踏みこみ同時に右手で受方の右手に霞を
掛け
(五図)左足を斜め後に開き
(六図)右腕を回転させながら腰を捻り受方我が前下に投げる
・上肢部(要 穴)
1>清冷淵=相手を極める時に用いる、肘より上方へ約6センチの中
央にある。
2>合 谷=相手を制御する時に使うが、母指伸筋腱にある。
(この合谷の穴は技の応用にはならない)
3>陽 谷=相手を骨法に掛ける時に使うが、尺骨茎状突起にある。
4>中手骨=相手を骨法に掛ける時に使うが、手の端の骨にある。
(指骨法で使用する)
5>山 脈=相手より脱する時に使うが、手甲の処にある。
6<液 門=相手を制御する時に使うが、小指と薬指の第一関節の間
にある。(中渚の穴は象りの応用にはならない)
・上肢背部
↓
↑
・上肢前部
1>腕 馴=相手より脱する時に使うが、内肘骨より上方へ約9セン
チ。
2>尺 沢=相手の重心を揺さぶる時に使うが、肘を曲げた内側。
3>三 里=相手より脱する時に使うが、肘関節の下方へ約6センチ
4>郄 門=相手の運動神経を止める時に、手根より上方へ約15セ
ンチ。
5>内 関=相手の経を逆流させる時に使うが、手根より上方へ約6
センチ。
6>脈 処=相手を表骨法に掛ける時に使うが、手根より上方へ約3
センチ。
・下肢三部
↑
・下肢外部
1>潜 龍=この穴は直立して、上肢を自然に垂らして、大腿部の外
側に中指の先が当たる処である。
2>膝 膕=相手を崩す時に使うが、ちょうど膝の真後ろの中央の膕
にある。
3>草 靡=相手を極める時に使うが、腓腹筋の下際の分肉の間に
あり手先で腱をすり上げて指の止まる処である。
4>外 踝=ここは、膀胱経の崑崙に近い、崑崙とは山のことであり
その衝撃は臓腑の虚実を左右するものである。 ↑
・下肢内部
1>夜 光=相手を崩す時に使うが、その穴は内股の中央部の起筋
にある。
2>膝 膕=相手を崩す時に使うが、ちょうど膝の真後ろの中央の膕
にある。
3>三陰交=内踝より上方へ約9センチ、骨の内側の筋の前にある。
この穴は山陰すなわち、足の脾経、肝経、腎経の交り会
うところで三陰交と言う。
4>内 踝=この所は足などで、三陰交から踝へ磨り落として、捻挫
に至らせる処である。 ↑
・下肢前部
1>伏 兎=この穴は膝の上、約18センチ起肉の間にある。その所は
伏せた兎のせのように高く盛り上がるから、伏兎と言う
2>解 谿=この穴はわらじの紐を結ぶ処であり、足の甲関節の前面
の中央の奥にある。この穴は全身の運動を停止する。
3>百匁落=足の甲の中足骨の陥中で動脈の触れる処にある。この動
脈は胃の気を伺う処で、悶え苦しむ。
4>草 隠=第四および第五間の中骨にある。