第十五Chapter ”やわら”の普遍性


     やわら”の普遍性

  ・検証 “引く” ”押す” ”掴む”
01・片手を掴む~灯籠落 Tourootosi
02・両肘を掴む~稲 妻 Inazuma
03・手首を掴み肩を押す~落 花 Raltuka
04・両手を掴み引く~太極投 Taikyokunage
05・両肘衣を掴んで引く~響 波 Yuranami
06・胸襟と肘衣を掴んで押す太極投 Taikyokunage
07・胸襟と肘衣を掴んで引く太極投  Taikyokunage
  ・検証 ”刈り倒し”         
08・刈り倒を防ぐ象り大外刈 Oosotogari
09・背負投を防ぐ象り背負 Seoidome  

   ・検証 ”引く” ”押す” ”掴む”
 ここでいくつか、柔道ベースに考えてみたい。
相手を掴み、押したり引いたりして崩しをかける。これが今日の柔道
においてほぼ例外なく現れる基本動作だろう。
象水流の“やわら”においては「相手を掴むな」を原則としているが、
ひとまず置いておいて、「押すことは自分が捌かれて崩れるから、あ
んまり感心しないが・引き」である。相手が押したり引いたりしてき
た時、それに対して負けないためには?
多くの方が、“頑張って抵抗する”と言う選択をするだろうが、これで
何とかなる確率は五分五分である。
相手の(力)が自分より弱ければ何とかもなろうが、強ければ必ず負
ける。相手の(力)に逆らってはならない。追随する。
それが負けないための最善の方策だ。
その在り方は(力)小胸筋を抜き自分が負けること(私は普段から周
りにある物などに触れると小胸筋を緩るめて核を使う事を考える)

“相手のなすがまま”のように思えるかもしれないが、この関係性は必
ず相手が崩れる結果となる。こちらは、そのつもりで動作しているか
から、その動き自体で崩れたりはしない。
一方相手は力むことによって必ず自体のどこかが不自由な状態に陥っ
ている(反作用)そういう状態の中で自らの(力)が空回りすれば、
必ず崩れる。こちらは“象る”だけでいい。
実はこの程度のことは、柔道にいてもごくごく基本として認識されて
いる。「相手が押して来たら引き、引いてきたら押せ」ということだ
しかし現実的に、これを柔道で実践している方は少ないように思う。

  ・片手を掴む~灯籠巡 Touromeguri YouTube

                                                 (一図)(受方)右足を進め右手で捕方の左手を取る、
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左手の掌を上に向けて
        返し受方の右手に乗せ
(三図)    左足を右足の踵の後に退きながら左手の掌を下へ向
        け

                                                  (四図)同時に右足の親指を左足の親指の処へ合し我が左手を左側へ
    大きくまわし
(五図)左足を右足の踵の後に退き同時に左手を下方に向けて引きな
    がら
(六図)左足の内側に右足を開き平行で立ちになり受方の右手を下方
    へ圧して受方を倒す。丁度、灯籠が巡るようだ。
                         

   ・両肘を掴む~稲 妻 Inazuma YouTube

 

(一図)(受方)右足を進めて両手で捕方の両肘を押さえる、
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左手を受方の右手の外
        側から振り上げ
(三図)    左手を受方の右手の内側へ廻し下し同時に受方の左
        手の内側から右手を振り上げ

 

(四図)    右手で受方の左手を下方に圧しながら
(五図)    我が左手で受方の右手を大きく受方の背後から廻し
        上げ
(六図)    我が右側へ受方を投げ落とす。(太極投)

   ・手首を取り肩を押さえる~落 花 YouTube

 

(一図)(受方)右足を進め右手で捕方の左手を取り左手で右肩を押
        さえる、
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左手を受方の右手の外
        側へ振り上げ
(三図)    右足を左足の後に退きながら左手を受方の右手の内
        がわへ廻し下し同時に受け法の左手の内側から右手
        を振り上げ

 

(四図)左足を右足の内側に開きながら右手を受方の左脇へ差し込み
(五図)我が左手で受方の背後から右手を大きく廻し上げ
(六図)我が前下に受方を投げ落とす。(辰巳投)

 ・両手を掴み引く~太極投 Taikyokunage YouTube 

 

(一図)(受方)右足を進め両手で捕方の両手首を掴んで引く、
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左足を進め同時に左手
        を受方の右手の外側から右手を受方の両手の間から
        振り上げ
(三図)    右足を左足の後に退きながら左手を受方の右手の内
        側へ廻し下し同時に受方の左手の内側から右手を廻
        し掛け

 

(四図)左足を右足の内側に開きながら左手を受方の右下へ圧し
(五図)我が左手を捻りながら受方の右手を背後へ大きく廻し上げ同
    時に受方の左手を我が左下に圧し
(六図)受方を我が前下に投げ落とす。(太極投)              

 ・両肘衣を掴んで引く~響 波 Yuranami YouTube

                                                 (一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の両肘衣を取って引く、
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左手を受方の右手の外
        側から左手を受方の両手の間から同時に振り上げ
(三図)    左足を受方の右足の横に踏み込みながら左小手を受
        方の右肘関に掛け右手を受方の左肩に当てる

                                                 (四図)右足を受方の右側に踏み出し
(五図)左足と進めるこの時、捕方が倒れながら両肘衣から両手を放
    さない
(六図)我れ両手で上方から受方の両腕を同時に叩く。

 ・胸襟と肘衣を掴んで押す~太極投  Taikyokunage
                    YouTube

                                                 (一図)(受方)右足を進め両手で捕方の胸襟と右肘衣を掴んで少し
        引く
(二図)(捕方)其の瞬間、千尋を描きながら左手を受方の右手の外
        側から右手を受方の左手の内側から掌を上に向けて
        廻し上げる
(三図)    受方が押し込んでくる我は右足を後に退きながら両
        手を返し

                                                 (四図)左手を受方の右手の上に乗せ下に圧しながら右手を受方の左
    手に乗せ
(五図)受方の右手を大きく廻し上げ同時に右手で受方の左手を我が
    左足の前に掬いながら
(六図)受方を投げる。

 ・胸襟と肘を掴んで引く~太極投 Taikyokunage
                          YouTub

 

(一図)(受方)右足を進めて右手で捕方の胸襟を取り左手で肘衣を
        取って引く、
(二図)(捕方)其の瞬間、核で千尋を描きながら右足を踏み出し両
        手を振り上げ(右手を受方の左手の外側から左手を
        受方の右手の外側から)
(三図)    右手を受方の左腕の上から当て同時に左手を受方の
        右腕の上から当て

 

(四図)我が左手で受方の右手を我が右下方へ掬いながら左足を右足
    の後へ退き
(五図)右足を横へ開きながら右手で受方の左手を受方の背後へ大き
    く廻し上げ
(六図)我が前下へ投げる。

       ・検証 ”刈り倒し”


 相手がやりたい動作はやらせてやる、それが、“象り”と言うことに
なる。
 相手が押し込んできたら、押し込まれてやればよいし、引きけ付て
きたら、引き付けられてやればよい。問題はその先であり、動作とし
ての景色を舞うことが出来れば、それこそが“象る”となる。
相手がこちらの足を刈ろうと振り上げた瞬間は、相手の体幹、とくに
上体の前進力は必ず減少に向かう。こちらの体を後方に倒そうという
技なのだから、当然、最終的には上体を押し込んでくるのだが、その
直前にこう言う一瞬が訪れるのだ。足を振り出すのだから、いわば“前
方を蹴る”ような行為に相当する むしろ後進力を生み出してしまいがち
な瞬間だ。
 ここでの相手の動作は、(力)の状態をそのままにてやればよい。
この瞬間、相手の上体をスッと横に送ることはたやすく、結果として
相手は大きく体を崩す。
ポイントは、相手の動作、(力)の状態を感得して、自分がどのよう
に“象り”を見出せるかどうかだ。それは「相手の(力)に逆らわない
」「舞うように“象る”」と言う“やわら”の原理が身に染み込んでいな
いと難しい。逆に言えば、これらが身に染み込んでいるならば、それ
だけで、大概な勢法は対処できるのだ。

 

 ・刈り倒を防ぐ象り~大外刈 Oosotogari YouTube


(一図)    捕方は受方の前で自然体で立つ
(二図)(受方)其の瞬間に左手で捕方の右肘衣を取りながら胸襟
        を取り、我れ引き付けられながら左足を受方の右
        側へ踏み込む
(三図)    早や受方は左足を踏みこんでくるが同時に我は右
        手を受方の左肩に乗せ


(四図)この時受方は右足を大きく上げ捕方の右足を刈らんとする、
    我は右足を進めながら優しく右肘で受方の肩を圧し
(五図)更に左足を進めながら右膝を地に付き受方を倒す
(六図)次に受方が右手で取る胸襟の上を左手で掴み右手を矢筈にし
    て受方の右手首をはねて外す。

 ・背負投を防ぐ象り~背負止 Seoidome YouTube


(一図)(受方)右足を進め左手で捕方の右袖衣を掴み
(二図)    強く引く
    (捕方)其の瞬間、右手を受方の右肩先へ振り上げる


(三図)(受方)右手で捕方の右手を抱えながら捕方の右足の前に
        右足を踏み込み
    (捕方)この時我は左手を受方の腰に当てる
(四図)    受方が左足を右足の内側に揃えながら腰を入れ投
        げんとす
(五図)    我は両膝を屈しながら左手で下方に圧する其とき
        受方は両膝を地に付け更に我を投げんとする


(六図)我は左手を受方の右側の肩甲骨に当て同時に右手を伸ばし
    て左肩に掛け受方の首を絞める(立絞め)
(七図)左足を後へ大きく開き
(八図)腰を捻りながら肘を伸ばし我が前下に倒す。

                      目録全へ戻る